キステムは同一労働・同一賃金を実行しろ 非正規労働者にもボーナスを出せ パート有期労働法裁判に勝利しよう！

2024年5月3日発行　会報第8号

4/26 同一労働同一賃金裁判の判決 盛岡地裁が��橋さんの請求を棄却！ 不当判決弾劾！控訴して闘おう！ ��橋さんは判決後の記者会見で、「自分のやってきたことは正しいと思っています、これからも闘って行きます」とはっきりと述べています。 　��橋さんを支え続けてこられたすべての支援の皆様。 公正判決を要請する署名を短期間で数多く寄せていただいた全国の仲間の皆様。 盛岡地裁第２民事部（棚木澄子裁判長）は、同一労働同一賃金を求めた契約社員��橋さんの請求をすべて棄却する判決を下しました。賞与が不支給（ゼロ）で良いとした理由を示さないまま、「不合理とはいえない」と結論だけ述べました。 　しかし、この不当判決によっても、��橋さんの賃金差別を許さない闘いは揺るぎません。 これから闘いが仙台高裁に移ります。 ��橋さんは一人で被告会社キステムに在職しながら、毎日困難をはね返して闘い続けてきました。 自分のためだけではなく、賃金差別に遭遇する２千万非正規労働者の声を代表して賃金の柱である基本給・賞与に関して同一労働同一賃金の主張を会社と裁判所に発し続けてきました。 最後の勝利のため、共に闘い続けましょう。 盛岡地裁の不当判決：その中身について ��橋さんを支援する会事務局 �@ 職務の同一性： 事実誤認のうえで、職務内容・責任の程度が違う旨の判定を下す 　判決は、原告が毎日行っている中心的業務が正社員と同一であることを認めつつも、「所長の補助業務を原告は行っていなかった」等、被告キステム側の主張をそのまま引き写して事務担当正社員との「職務内容と責任の程度の相違」を認定した。しかし原告は所長の補助業務を行っていたし、職務が他の営業所の事務担当の正社員と比較して内容も責任も軽いものではなかった。　また判決は、事務担当正社員が相当残業を行う一方、原告がほとんど行っていないと認定し た。しかし、事務担当正社員の中にも残業を全く行っていない者もおり、これも事実誤認であ る。もっとも残業時間によって業務や責任の相違をいうのは当を得ない。 �A 配転の有無： 事務担当正社員は将来の配置転換の可能性がある、として待遇差を正当化 　判決は、「東北支店営業所の事務担当正社員についての配置転換の例が少なくとも平成２６年度以降ないとしても事務担当正社員については、将来的に配置転換等の可能性があると言える」として不確定未来の事柄を持ち出して原告との違いに仕立て上げた。将来の可能性は何とでも言える。長年の実態は、原告も事務担当正社員も配転がなく、同一の状況である。 �B その他の事由： 「正社員登用制度」があれば、著しい賃金格差が許されるのか？ 　判決は、「被告においては正社員登用制度が存在し、同制度は実際に機能しているため、契約社員は同制度によって正社員との賃金の相違を解消する機会が与えられていることからすれば･･･基本給の額に相違があることは、不合理と評価することが出来るものとはいえない」とした。 正社員に上がれば賃金格差が解決するというのは明らかに問題のすり替えである。原告は、現にある契約社員と正社員との賃金格差が不合理であるからこそ解消を求めた。 �C 判断枠組み： （非正規労働者の賞与請求を棄却した）最高裁大阪医科薬科大判決、と説示 　判決文４３頁には、「判断枠組み」を（非正規職員の賞与請求を棄却した）「令和２年１０月 13日最高裁第 3 小法廷の大阪医科薬科大判決」とする旨の記載がある。この最高裁判決を背景に、「待遇差が不合理とはいえない」と繰り返し述べていると思われる。盛岡地裁はこの最高裁判決にしがみつき、労働契約法２０条及びパート有期雇用労働法第８条の均衡待遇規定を考慮しない偏った判決を下した。 �D 均衡待遇規定： 正社員は年間賞与１２０万円、契約社員はゼロでいいか？ 　仮に正社員の貢献度と契約社員の貢献度に相違があると会社が評価したとしても、契約社員の原告に賞与を一切支給しないのは極めて不合理である。 厚生労働省が作成したパート有期雇用労働法の解説書は、「賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に一定の相違がある場合においては、相違に応じた賞与を支払わなければならない」と、明記している。どういう理由で「事務担当正社員が年間賞与１２０万円支給される一方、原告はゼロでいい」と判断したのか？ 仮に仕事内容等に差があっても、それなりの待遇（均衡待遇）が行われる必要がある。不当な賃金差別が非正規労働者の生活を日々追いつめていることを裁判所は知るべきだ。是正する立場に立つべきだ。 �E 待遇差の理由を説明する義務違反： 抽象的で意味のない言葉を、「説明した」と判定 　判決は、「原告は、令和元年１０月２４日以降、被告に対し、直接又は加入する労働組合を通じて、･･･基本給の額や賞与支給の有無に関する契約社員と正社員との待遇の相違の内容及び理由等についての説明を求めるなどしていたところ、・・・契約社員には正社員と異なり賞与が支給されないこと及びその理由をについて回答するとともに・・・」とした。 しかし、被告キステムが原告に待遇差の理由については、原告が比較すべき正社員を求めたにも関わらず示すこともなく、「契約社員就業規則が適用され、賞与がないと書いてある」というように、抽象的で意味のない回答をしただけであった。 しかし判決は、「パート・有期法１４条の２項又は信義則上の説明義務に違反するものであったということはできない」と言い逃れた。 許されない、法の目的に反する盛岡地裁の判決 ��橋さんを支援する会 代表 岩見 千丈 　労働条件の格差とその解消をめぐる最高裁の判決は、賞与や退職金といった基幹賃金に関し、従来原告側にとって厳しい判決が多いため、今回の裁判についても原告に不利な判決が出るのではないかと危惧されていました。結果は予想以上に厳しく、今回の地裁判決では裁判長の判決は「原告の訴えをすべて棄却する。内容は文書で伝える」という主旨で、十秒ほどで終わりました。 　��橋さんは厚労省のパート・有期労働法のガイドラインを精読し、この内容なら１００％自分にも当てはまると確信した上で裁判を闘ってきました。しかし地裁は、他の事務系正社員と比較して、明らかな労務内容の違いがあるとする被告側の主張を信用しました。証人尋問の時、被告側の証人は他の営業所の事務員が��橋さんより大きな権限を持った労務もしていたとの情報を他の営業所の所長から聞いたと証言しました。しかし、反対尋問のなかで一つの営業所所長の話であることが明らかになりそうになり、被告側弁護士が「他の営業所も同じだったのではないですか？」と聞かれて力なく肯定する現場を私も見ています。 　パート・有期労働法の目的は、言うまでもなくパート・有期労働者の多くが差別的な待遇を受けていることを是正することでした。しかし今回の判決が正しいなら、この法律の目的は「わずかな違いをあらさがしして、合法的にパート・有期労働者の置かれている差別的現状を当該労働者に認めさせる」ことになります。このような法の解釈を許すなら、一見有期労働者の味方に見えるこの法律は、逆に有期労働者の差別を固定するものになってしまいます。だから、今回の判決はこ の法律の目的に反することを、声を大にして訴える必要があります。パート・有期労働法を「ざる法」にしないよう、より安定した労働環境の実現に役立たせるよう社会的に働きかけていく必要があります。 　��橋さんは直ちに、控訴する意思を表明しました。引き続きご支援をお願いします。